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久々に海に行ってみると誰もおらず、天気も曇りだったので、普段は行かない端っこの方にも行ってみることにした。

ひとつ、いわの間に海水がよく溜まっているところの手前に、何かうごめいているような気がした。

先ほどスーパーで今晩のおかず何にしようか考えていたからか、カニだったら、いいのになと思いながら、近づいてみることにした。

近づいてよく見てみると、カニよりも随分と大きいし、目玉も人並に大きい。そんな赤黒い物体のようなものが砂に埋まっていた。

こんなに近づけたのは、すこし愛らしいキャラクターのようにも見えたからかもしれない。敵意は感じなかったし、虫みたいな気持ち悪さもなかった。

そして、なんとなく「知的生命体」という印象を受けたのかもしれない。

「俺は一体何者だったけか。何していたんだっけか」

彼は人語で話した。とは言っても、こちらに話しかけているのか、独り言なのか、曖昧な様子で呟いた。

彼が体をときおり揺らすと、体は砂に埋まっているだけなのだが、今にもずぶずぶと沈んで行くようにも見えた。

彼は遠い目で曇り空を見上げたあと、また体を揺らし、ずぶずぶと身を沈めていった。

もう、ほとんど埋まりかけている。

仲間になりたそうに、こちらを見ているのだったらいいのだが。

とりあえず、見なかったことにした。

曇りでも、なんかいい日だなと思った。